運動が体に与える影響っていうのは相当あると思うけど、今回は運動が記憶力に与える影響を見ていきたいと思う。年齢とともに記憶力が落ちていくのはしょうがないとしても、やっぱり嫌です。でも運動はその記憶力に良い影響を与えてくれるらしい。
運動が記憶力に効果を与える
脳の海馬って何かと聞いたりすることがありますよね、記憶に関係する器官とかでなんか重要そうといったイメージです。その通りで海馬の神経は記憶に関係しています。そして、神経が新たに生まれることを神経新生というのだ。この神経新生を阻害するとどうなるか。
放射線照射により海馬の神経新生を阻害すると,若いマウスでも学習記憶能力の著しい低下が起こる
マウスでの検証だけど、学習記憶能力の著しい低下が起こる。つまり海馬の神経新生は学習記憶能力に影響を及ぼす重要な因子と考えられるということだ。そして、運動は神経新生の低下を抑制し、加齢による学習記憶能力の低下を抑制する。
運動は加齢 による神経新生の低下を抑制し,加齢による学習記憶 能力の低下を抑制する(図 2).さらに,継続的なス トレス負荷は実験動物の学習記憶能力を低下させるが,運動はこのストレス由来の学習記憶能力の低下を防ぐ .
また,運動による学習記憶能力の改善効果は IGF-1 作用の阻害により消失する.また,海馬の神 経新生は記憶の獲得のみならず記憶の消去にも関連し ていることも明らかになっている.このように,運 動は海馬の神経新生を増加させ,その結果として加齢 やストレスによる学習記憶能力の低下を防ぐ
運動の効果はすごいですね、それによって加齢による学習記憶能力の低下を抑制してくれるなんてこの時点でもはや運動しない理由がない気がする。
ちなみに生理学・医学賞を受賞したサンティアゴ・ラモニ・カハールが成体の脳では新たな神経細胞は生まれないということを提唱していたけど、それは違うみたいです。1990年代後半までには人も含めた全ての哺乳類で神経細胞が生まれることが証明されているとか。
神経新生はうつ病にも関係する
うつ病にも神経細胞は関係していそうです。よくネットや本なんかで見かけますよね。この効果に関して書いてあるものもありますね。
抗うつ薬投与がうつ様行動の改善とともに神経新生を増加させ,神経新生を阻害すると抗うつ薬の効果が消失することから,うつ様行動の発症・改善には海馬の神経新生が関係する
神経新生を阻害すると抗うつ薬の効果が消失するというのですからそういうことなんでしょう。運動はうつ病に効果的だということは聞いたことがあるけど、こういったことも関係しているのかもしれない。
運動は計算成績に影響を与える
運動は計算能力にも影響を与えるらしい。これは良い影響だ。
22名の被検者について ,自転車エルゴメーターにより規定された運動負荷が計算成績に及ぼす効果を検討した・ 自律神経機能の測度として ,水プレチスモグラフ による指容積変化のほか , 心拍数,呼吸数および血圧を同時認 録した ,実験結果および考察を要約するとつぎの通りである .
- 12〜16分でオ ールアウトに至る漸増負荷による身体運動により,計算成績は6・2パ ーセ ン ト向上した
- 指容積は運動前後とも計算 中に減少したが ,運動後の減少度の方が大きかった.
- 心拍数 ,呼吸数,血圧は,運動前後とも計算中に著明な増加を示した ,
- 本研究における運動後の 計算成績の向上は ,覚醒度あるいは定位反射の強化と関係していると思われる・
この実験は18歳から49歳の健康な男子22人に行われ、そのうち20名は18歳から22歳。運動前と運動後に計算成績がどう変化するのかを検証したものだ。運動の効果を比べるために運動の代わりに安静にするパターンもある。
- 試験前後に安静
- 試験前後に運動
この2つのパターンを比較した結果、運動ありの場合計算成績の向上が見られたという。ちなみに計算は運動前に5から7回、運動後は5分の休憩後7回の計算作業を行ったということだ。
表からも見てわかるようにafter exerの方が数値が高いのがわかる。計算方法なんかが気になれば論文を熟読してみるといいでしょう。
運動の効果は一過性かもしれない
色々調べてみると運動による効果は結構良さそうなものが多々見られる。
さっきの運動で計算成績が上がるという検証結果が出ていたけど、これは一過性でしょう。運動するたびに計算能力上がっていったら無限に強くなれちゃいますからね。これに関してこんなことが書かれている論文もあるね。
30 分間の中強度有酸素運動 は認知機能に一過性の影響を与えること、また、 運動の効果は持続しないことが明らかになった。 従って、早朝に行う 30 分間の中強度有酸素運動 は、認知機能に一過性の影響を与えるため、一時的に気分が良くなり、頭がスッキリする感覚が得 られるかもしれないが、それは持続しないと考えられた。 私たちの日常生活において早朝に 30 分間の中 強度有酸素運動を行うことは、一時的に気分が良 くなり、集中力が増すという現象については期待 できるが、認知機能そのものを向上させるという ことに効果はなく、仕事能率が上がるという期待 や、持続的に良い気分を維持できるということを 証明する結果にはいたらなかった。
運動した後は確かに気分は良いものだしスッキリする。集中力も上がるかもしれない。だけど、それは一時的なもので長時間続くわけではない。さっきの論文であった計算も運動した後にやったからであって、運動後数時間後とかなら全然違う結果になりそうですよね。
運動は老化を遅延させる
運動は老化を遅延させるという検証がなされているものもありますね。
定期的運動は生物学的老化を遅延させ、多くの老化関連病の発症を遅らせる。
ただ、過剰な運動は有害にもなり得るので、ほどほどが良さそうですね。疲労状態になるまで運動させたラットの肺に顕著に酸化修飾タンパク質が増えていることを見出したということも確認されています。
この研究では人間でなくラットを対象に実験が行われているので、人間だと違う結果が得られるかもしれないですね。老化に関する調べはこっちで書いたので、老化したくない!って思うなら見てみるといいでしょう。
運動と免疫
運動は免疫力を上げて病気の感染を予防してくれるなんていった効果を聞いたこともありますよね。
運動はエネルギー消費を高め、栄養摂取過剰による肥満、糖尿病、高血圧症等の生活習慣病の予防・治療に有用なことは周知の通りである
運動習慣による発がん予防効果は、複数の疫学調査の成果をふまえ、大腸がんではほぼ確実、肺がんと乳がんでは可能性があると報告されている
やっぱり運動の力は偉大ですね。生活習慣病の予防になるのならやっておいた方が良さそうです。それにガンに関しても予防の可能性があるんですね。
過度な運動は注意
運動が今まで見てきたように有用だけど、競技スポーツに見られる過酷なトレーニングは免疫能を弱め易感染症になるとされているとか。過度であればあるほど、感染のリスクも上がってくるみたいですね。
適度な運動が一番良いので、過度な運動をするのはやめておきましょう。どれぐらいの運動量が適切かというのはこれぐらいらしい。
健康増進のために奨励されている運動条件は、有酸素運動の強度、すなわち最大酸素摂取量の50-60%ないし無酸素性作業閾値以下で1日20−60分までを週3回以上の頻度で長時間継続することが推奨されている。
正直言葉が難しくてわかりにくいですね。単語に関しては噛み砕いて説明している記事を貼っておきます。
まとめ
適度な運動はした方が良い。それが生活習慣病の予防につながるしガン予防にもなるかもしれない。さらにうつ病や老化にも良い影響を与えるというのだからもはや運動しない理由はないですね。